韓国の東の海で獲れる「明太(명태、ミョンテ)」という魚
韓国の東海岸ではスケソウダラがよく獲れることで知られています。スケソウダラは韓国語で「明太(명태、ミョンテ)」といいますが、日本でもよく食べられる「明太子(めんたいこ)」の語源はここにあり、これは「明太の子ども」という意味です。 この明太(명태、ミョンテ)に関しては、加工方法(流通)によって名前が変わる魚で、呼び名がいろいろとあります。そのなかでも一般的な干しタラは「北魚(북어、プゴ)」といいます。それを使った「プゴクッ(북어국)」という干しタラのスープはコラーゲンがあるとして美容にも良いと日本のテレビ番組でも話題になったことがあります。 その一方、江原道の寒冷地で、冬場に自然のなかで干し、夜に凍らせて、昼に溶ける、というのを繰り返したものを「黄太(황태、ファンテ)」といいます。そこで「この二つの栄養価に違いはあるのか?」と質問してみたところ「とくに栄養価の違いはないが、食感が異なる」とのことでした。 プゴとファンテの違いは製法の差でもあるのですが、「どの地域で作られるかの違い」だともお話されていました。今回訪れた麟蹄郡の龍垈里(용대리)、平昌郡大関嶺(대관령)で作られた干しタラが「ファンテ」と呼ばれてきたというのです。 そして最近販売されているものは、「北魚(북어、プゴ)」とは言わない傾向にあり、「黄太(ファンテ、황태)」の名で流通している、とのこと。同行した食品会社の韓国人の社長は、「かつてはプゴ(북어)とファンテ(황태)を明確に区別していた」とも話していましたが、今回の訪問時に聞いた話では、最近はそういった区別は薄れてきた、ということです。 ※とはいえプゴとファンテでは明らかに食感や質感が異なる、という意見も存在します(追記2022.5.14) ●最近登場した「モクテ(먹태)」とは何か?そして最近よく聞くようになったのは「モクテ(먹태)」というもの。約2年前、ビールのおつまみとして干しタラが出てきたとき、韓国人ガイドの方に「これはファンテ(황태)ですよね」と尋ねてみたところ、「最近はこれをモクテ(먹태)っていうんですよ」との答えが返ってきました。それ以来「モクテって何だろう?」と疑問に思っていたのです。 そもそも6、7年前までは「モクテ(먹태)」という言葉すらあまり知られていませんでした。そこで韓国のインターネット記事を調べてみると「ファンテの皮が薄黒くなって、光を帯びたもの」と書かれてはいるのですが、正直あまりピンときません。参考:‘황태의 변신’ 먹태를 아시나요(ファンテの変身 モクテを知ってますか)(2012.3.31) 今回、質問を通じて明らかになったのは、「ファンテ(황태)」は、上述のように「自然のなかで2~3か月かけて凍らせたもの」であって、一方で「モクテ(먹태)」は「人工的に冷凍庫のなかで凍らせるなどして、商品として作ったもの(4~5日)」とのこと。モクテのほうが早く出来上がるので、費用が安く上がると思いきや、実際には機械や光熱費が掛かる「モクテ」のほうが製造費用が掛かるとのことでした。 とにかくスケソウダラの干物は、製造方法や地域によって名前が異なり、最近、また新たな名前が付けられたということなのです。 ●韓国で人気が出てきたファンテは、日本で流通するか?
さて、このファンテですが、「ファンテ」や「モクテ」などという名で、ここ数年、ビールのおつまみとして韓国でも人気が出てきています。ファンテ製造業者の間では日本にもこれを広めていくことで輸出が進むのではないか、という期待もあるようです。 日本でのファンテの食べ方としては、「ラーメンに入れたらどうか」とも考えられているようです。そしてお酒のおつまみ用としては、味付けされた「ファン・ジニ(황진이)」という商品も登場しています。これはファンテの「ファン(황)」と、朝鮮時代の有名な妓生である「黄真伊(황진이)」をかけたネーミング。パッケージも綺麗なので、コンビニで売っていたら、つい購入してしまいそうです。 「ファンジニ(황진이)」は2018年12月に東京ドームプリズムホールで行われたK-FESTIVAL2018でも販売されており、私はパッケージに見とれて思わず購入してしまいました。歯ごたえがあり、ほどよくピリ辛でなかなか美味しかったです。 輸入業者のあいだでは「コンビニで売られたら、人気が出るのでは?」「これはイケそうだね」という声も出ており、今後日本で継続的に販売されるか、にも期待がかかります。 取材協力:江原道、デリュン営農組合法人(대륭영농조합법인)