韓国のキムチには地方ごとの特色がありますが、韓国南西部の全羅道のキムチは塩辛や唐辛子の量が多く、濃厚で刺激的な辛さがあることが特徴です。
全羅道のなかでも南に位置する全羅南道・康津郡が地域ブランドとして製造しているキムチ、「康津ムグンジ」の日本に輸出へ向けての試食会が、2023年6月に東京都内の韓国料理店で行われました。
ムグンジ(묵은지)とは一般的には6か月以上熟成したキムチのことをいい、日本語では「熟成キムチ」「古漬けキムチ」と言われますが、全羅道のキムチの辛さ、塩辛さに加え、発酵が進んでいるために酸味が強いことが特徴で、加熱する料理に適しています。
全羅南道・康津郡と地域ブランド「康津ムグンジ」
全羅南道・康津郡は全羅南道のなかでも南部に位置し、南海に面しています。人口は約3万3千人という小さな都市で、高麗青磁で有名な地域でもあります。
この地域では韓定食が名物料理なのですが、2020年4月より地域の業者が集まり、地域ブランドとしてムグンジを開発し始めました。コロナ禍で自宅で食事をする「おうちごはん(チッパプ、집밥)」が広まり、その波に乗ってインターネット販売が好調だったようです。情報元:全南康津「ムグンジ」全国へ “おうちごはん時代”に人気 (전남 강진 ‘묵은지’ 전국으로…’집밥 시대’ 인기) (2021.08.10、MBC)
当日の聞き取りによると、康津ムグンジは+1℃~0℃の低温を行ったり来たりさせながら、6か月間にわたり熟成させています。100%韓国産の材料を使って作っている、とのことでした。
試食会に向けては現地からの飛行機での移動で手荷物として運ばれました。辛い味(매운 맛)とマイルドな味(연한 맛)の2種類がありましたが、下の写真がマイルドな味。
ムグンジなので酸味は強いですが、塩辛が少なめ、辛さを抑えて、子どもや高齢者でも食べやすくしたもの、とのことですが、それでもわりと辛いと感じます。調理に使うにはこちらが合っているそうです。
下の写真が辛い味(매운 맛)で、そのまま食べても刺激的な辛さですが、非常にコクがあります。パンチの効いた発酵食品でスパイシーな味わいを楽しみたい方は、こちらがおすすめです。
この2つがそのままの形で味わったキムチ。それぞれ好みに応じて味を楽しめますが、今回はキムチチム(김치찜)として提供いただきました。
キムチチムにして味わった3品~豚肩ロース・サバ・サンマ
キムチチムとは、肉や魚をキムチとともに蒸した料理です。韓国の飲食店で食べると豚肉とともに出てくることが多いですが、今回は豚肩ロースと、サバ・サンマのキムチチムの試食をしました。
豚肩ロースには辛い味のほうのムグンジが用いられました。肉ははさみで切り刻んで食べやすいサイズにしてから口にします。
キムチは濃厚ですが、味付けはサッパリとしており、キムチそのものの味が際立ちます。辛いのでよりご飯が進みます。
そしてサバ・サンマのキムチチム。こちらはマイルドな味のほうのムグンジを使用しています。
マイルドなので具材とより調和するような気がします。脂ののったサバやサンマにさっぱりとしたキムチが良く合います。こちらもまた酸味はそれなりに強いです。
いずれもムグンジそのものを頂くより、辛さや酸味がいくらか和らぎ、より食べやすくなります。
韓国の本場の味そのものを愉しむか、日本向けには味を変えたほうがよいのか
ムグンジとムグンジを使った料理を頂きましたが、非常に辛く酸味もあります。「キムチ」というものをイメージして食べたときに、普段食べているものよりも辛さや酸っぱさが際立つと思います。
本場の味と思って食べるならよいですが、日本向けの商品としてより食べやすく、味を調整するなども方法のひとつだと思います。ムグンジは一般的なキムチ以上に、料理に使えるということも同時に伝えていく必要があるかと思います。
在韓の方は康津郡のサイトよりオンライン購入が可能です(※もし購入してレビューなどを書くときは当サイトで見たこともお知らせください)。
まずは韓国に出かけたときにはキムチのなかでも「ムグンジ」を意識してお店やメニューを選んだり、商品化されているものをお土産として買ってくる、というのもよいのではないでしょうか。