韓国では2000年代前半に「ウェルビン(웰빙、Well-being)」という言葉が流行し、それ以来、食分野では健康食という形で広まっていきました。語源はイタリア語だそうですが、この言葉は日本でも定着しているといえます。

韓国料理では様々な副菜がつくため、キムチも含めて野菜がたっぷり摂れるイメージがありますが、それだけでなく葉物野菜を主食であるご飯に包んで食べる料理が「サムパプ(쌈밥)」です。カタカナでは「サンパ」「サムパッ」と表記したりもします。

そんなサムパプはわりと気軽に味わえる料理ですが、さらにこの店ならではの特徴として、江原道名物の山菜・コンドゥレナムル(곤드레나물)を入れたご飯を、こだわりのサムジャン(쌈장)とともに味わえることから、ご紹介します。

金浦空港から近いグルメ店:野菜豊富なサムパプのお店

そのサムパプのお店の名前は、山菜ナムル専門店「チャヨンチェ サムパプ(자연채 쌈밥、自然菜サムパプ)」といいます。場所はソウル市江西(カンソ)区登村洞にあります。

場所は地下鉄9号線・陽川郷校(ヤンチョンヒャンギョ)駅6番出口から徒歩で、約4分のところに位置しています。陽川郷校駅はソウルの玄関口・金浦空港からも近く、金浦空港駅からは地下鉄9号線ではわずか4駅(約10分)です。仮に空港からタクシーで行っても15分、7,000~8,000ウォン程度です。

店内には漢字で書かれた4つの約束

お店に入ると日本人でもわかりやすく漢字で4つの言葉が記されており、「正直、新鮮、清潔、健康」と書かれています。店内から調理場が見える形になっているのも安心できる要素のひとつでしょうか。

そういったことも当然大事なのですが、筆者としては下に書かれた、「清浄地域である江原道寧越で栽培された品質の優秀なコンドゥレと、平澤から環境に優しい農場で育ったタニシを直接供給を受けて使用しています。」という言葉に注目しました。

清浄地域(청정지역)という言葉は、「綺麗で澄んだ地域」という意味でよく使われる言葉で、寧越(영월、ヨンウォル)は江原道南部の山間地域、また平澤(평택、ピョンテク)は京畿道の南にある地域で、忠清北道に隣接しています。

このようにソウルから少し離れた地域から供給された、質のよく、こだわりの食材を使っていることがうかがえます。

山菜ナムル専門店でサムパプ+焼肉+ツルニンジン焼き

今回はこの店のメニューをすべて頂いてきました。基本となるメニューは10,000ウォンのサムパプで、そこにプルコギまたは豚肉炒めを添えると12,000ウォンとなります(※2人分からケランチム(卵蒸し)提供)。

さらにトドククイ(더덕구이、ツルニンジン焼き)を加えると16,000ウォンです。お値段としては日本円で1,000円強からということになります。物価高のなかでも比較的リーズナブルだといえますし、ソウル都心よりも少しお手頃になっていると言えると思います。(※値段は変更になる可能性があります)

ごはんはふだんはコンドゥレナムル(곤드레나물)が入った混ぜご飯だそうですが、この日はシレギ(大根の葉を干したもの)ごはんが出てきました。シレギはスープにも入っていますが、これも寒風の中で干して解かして、を繰り返したもの。

コンドゥレナムルは江原道の特産物で、一般的に炊いたあとの香りもよいものですが、シレギもまた同じ江原道の楊口(ヤング)郡のパンチボウル村という有名な場所があります。このような特産の山菜・乾燥野菜を使ったごはんが提供されます。

タニシが入ったこだわりのサムジャン

そしてこの店のこだわりの包み味噌、サムジャン(쌈장)。このサムジャンにはタニシ(우렁)が入っています。タニシは淡水で獲れる貝なのですが、食用に養殖されています。

茹でられたタニシは、ほどよくコリコリとした弾力があります。サムジャンも名峰・智異山(지리산)の麓のテンジャン(味噌)をベースにして、このお店の社長が20種類もの食材を混ぜ合わせせ、2日間かけて作っているそうです。

かき混ぜてみると柔らかい感触で、塩辛くもなく、そのまま味わってもよいほどのサムジャンです。もちろん野菜に包んだご飯、サムパプとともに食べても美味しくいただだけます。

またこの店では特にそのように謳われているわけではないですが、このようなタニシの入ったサムジャン(ウロンサムジャン、우렁쌈장)ととともに食べるウロンサムパプ(우렁쌈밥)は、忠清道の郷土料理でもあります。

このようにこのお店では地方の良質な食材、そして料理としては地方発の要素が取り入れられているといえます。

包み野菜にもこだわり、様々な種類の葉野菜を用意

さて山菜ごはんを包んで食べるための野菜は全12種類。一般的なサンチュやえごまの葉はもちろんのこと、紅サンチュやスイスチャード、当帰などなど、様々な葉野菜が出てきます。

このような冷蔵ケースで、客席から見えるような形で保管されています。ひとつひとつ説明が書かれています。種類が豊富なのでサムパプを食べると食物繊維はもちろん、ビタミン、ベータカロチンなど多種多様の栄養素がとれます。

包むときにそれぞれの葉の違いを味わいながら食べても楽しく美味しく頂けます。

副菜のパンチャンの素材選びも丁寧に

パンチャンは6品出ますが、大根キムチやニンニク漬け、ダイコンのほか、ウコギ、ヤマクラゲ、シラヤマギクを炒めたものが出てきました。これらの食材のなかには日本ではそれほど馴染みのないものもあります。

山菜ナムル専門店だけあって、どの包み野菜もナムルも素材を選ぶ段階からのこだわりが感じられます。このように包み野菜の種類も豊富で、つきだしのおかずにも栄養価のある野菜が使われており、このお店に来店したお客さんは「健康を食べに来た」と話すほどだそうです。

店内にはこのようなナムルについて、効能などが書かれた説明書きが用意されています。韓国語が読める方はお店に行って読んでみてください。

そしてお客さんが帰ったあとの閉店間際の店内を撮らせていただきました。客席はこのような様子で、誰もが気軽に入れるようなお店になっています。

お店の料理あれこれ:「健康を食べに来た」と話すお客さんも

サムパプは野菜が中心になりますが、お肉を一緒に食べても美味しくいただけてより満足できます。焼肉にのった青々しいネギ、そして豊富な包み野菜とともに味わえます。

そしてツルニンジン焼きのトドククイ(더덕구이)。サポニンが豊富な山菜で、韓国の山間部の食堂だったり焼肉店で出てきたりするものですが、このお店は山菜専門店として登場します。

赤くて辛そうにも見えますが、お肉も含めてやさしい味わいのため、よほど辛いものが苦手なわけでなければ、誰でも頂けるようなものです。

焼肉、トドククイ以外でサイドメニューはなく、サムパプ専門店として一点勝負なのは韓国の食堂らしいですが、それだけに野菜やサムジャンへのこだわりがとても感じられる良いお店です。

このように包み野菜の種類も豊富で、つきだしのおかずにも栄養価のある野菜が使われており、このお店に来店したお客さんは「健康を食べに来た」と話すほどだそうです。

お店の周辺にはソウル植物園・LGパークなども

駅から歩いても近い場所に位置しており、金浦空港に到着後にはソウル市内に出る前に立ち寄ったり、帰国前に美味しくて健康的なものを味わいたいときに、この店を訪れるとよいでしょう。

最寄りの陽川郷校駅は空港鉄道の麻谷ナル駅から乗り換えて1駅のところに位置しており、参考として9号線高速ターミナル駅からは各駅停車で40分弱で、江南方面からのアクセスが可能です。

【住所】
チャヨンチェ サムパプ(자연채 쌈밥)
住所:ソウル市江西区江西路68ギル12
営業時間:11時~21時
参考:NAVERの情報(韓国語)

ちなみに陽川郷校駅周辺にはソウル植物園、LGアートセンターなどがあります。これらの施設に立ち寄るついでに出かけてみてもよいでしょう。

※お店に行った方は、この記事を見て行ったと伝えておいてください。