韓国で焼肉を食べるとき、包み野菜とする代表的なものがサンチュとえごまの葉です。その葉に肉をくるみ、サムジャンのような合わせ味噌のほか、塩が混ざったごま油をつけていただくことが多いのではないでしょうか。
[豚の首肉、モクサル(목살)]
そのほかの包み野菜としては、どんなものが思いつくでしょうか?”쌈무(サムム)”という大根の酢のものが出る店もありますし、特にここ数年、流行していたものは、酢醤油漬けされた行者ニンニクをくるむ食べ方。そこにわさびを添えて食べたりもします。
もちろんサンチュや荏胡麻の葉も出されたうえで行者ニンニクが添えられる、というものなので、あくまでもおまけ的な、プラスアルファの包み野菜といえるでしょう。
[行者ニンニクを醤油・酢などで漬けたもの]
えごまの葉も独特のクセがありますが、行者ニンニクも香味があるもので、ニンニク以上にアリシンが多く含まれています。
それを甘味を加えたりした酢醤油に漬けておくわけですから、わずかながらマイルドになります。また脂分が多い肉にくるむことでさっぱりとして、味のアクセントにもなります。
韓国にたびたび出かけている方は召し上がった、という方もいらっしゃることでしょう。それ以後少しずつ日本にある韓国焼肉店にも浸透はしているようです。お店で出されたときには「これはなんだろう」と思いながらも、気にせず口にしていた方もいるのではないでしょうか。
さて行者ニンニクとはどんなものなのか、以下でご紹介したいと思います。
行者ニンニク(ミョンイナムル)とはどんなもの?
行者ニンニクは山菜のひとつ。韓国語では「山ニンニク」という意味のサンマヌル(산마늘)、またはミョンイナムル(명이나물)という名で呼ばれています。
韓国では東方の海上に浮かぶ鬱陵島(ウルルンド、울릉도)のほか、江原道や慶尚道のあたりが産地としてよく知られており、また日本にも自生しているため、春から初夏にかけて市場に出回ることがあります。
[ソウル駅にあった鬱陵島・済州島の特産品店]
それでも都市圏のスーパーで見かけることはほとんどありませんが、地域によっては農産物直売所などで販売されていることがあります。
そんなこともあり、もし手に入れば自家製で韓国風に作ってみてもよいと思います。主な材料としては醤油・酢・酒・砂糖をお好みに合わせて適切な分量を合わせ、そこにタマネギやナツメ、ショウガなどを入れてグツグツと沸騰させます。その汁を冷まして行者ニンニクを漬けておくというものです。
この行者ニンニクには免疫力を高めたりするほか、疲労回復や滋養強壮の効果があるのだといいます。
独特の風味がある行者ニンニク。脂っぽい肉と一緒に食べるとさっぱり頂けるので一度食べるとやみつきになる人もいます。焼肉を食べるときに「生ニンニクは強すぎる!」と思う方は、この行者ニンニクが薬味のようにちょうどよくいただけるのではないかと思います。
ただし行者ニンニクは値段が少々お高めなので、お店では軽く添えられている程度です。韓国のお店ではおかわりはできますが、もし追加してもらうときは店員さんの顔色を見ながら、申し訳なさそうに追加をお願いしたほうがよさそうです。
独特の風味がやみつきに!ミョンイナムル
みずから行者ニンニクを手に入れ、行者ニンニクの酢醤油漬けを作ってみるのもよいですが、まずは実際に本物を食べてみることをおすすめします。韓国の焼肉店で食べたものを思い出したり、缶詰になった商品の味を思い出して、美味しいと思ったものを作ってみるとよいと思います。
最も購入しやすいものが、最近では日本のエスニック食材店でも販売されている「えごまの葉缶詰」。センピョ(샘표)から同じシリーズとして出ている「行者ニンニク缶詰」が最も手頃です。これは一般のエスニックショップではめったに目にしません。韓国系スーパーでは稀に見かけます。
こちらは中国産の行者ニンニクを使ったもので、価格や手軽さとしてはよいです。
また韓国の特産品として韓国でも販売され、日本に輸入されるようになったのが以下のような缶詰のミョンイナムル。こちらは慶尚北道・浦項にある独島貿易による商品。2020年頃から輸入されるようになり、慶尚北道優秀農産物として韓国系スーパーでイベント販売されていたりもしました。
ちなみに独島貿易の「独島」という名称は社名や屋号としてよく使われているもので、あまり気にする必要はないでしょう。韓国系食品流通会社を通して販売されています。
※行者ニンニクは、インターネット上でも購入できます。行者ニンニク ミョンイナムル(4缶で3780円、1缶あたり945 円送料込・BOBUSAN)
このように国内でもいくつかの商品が出回っていますが、ヘルシーで健康的な山菜のひとつとして、サムギョプサルなどの豚焼肉と、行者ニンニクとのハーモニーを楽しんでいただければと思います。