チメク(チメッ)とは、チキン&ビールのこと。ビールは韓国では「麦酒」という漢字をあて、「メクチュ(맥주)」と読みます。つまりチキン&メクチュで「チメク」。チメクは韓国人の集まりでは定番のメニュー。フライドチキンをおつまみにして、ビールを飲むのです。
韓国では料理とお酒に相性があるとされています。サムギョプサルには焼酎、チヂミにはマッコリと決まっていますが、チキンにはビールが相性がよい、とされています。 この記事の本題からはそれますが、焼酎(소주、ソジュ)+ビール(맥주、メクチュ)の組み合わせで「ソメク」という言葉もあります。関連記事:ソメク専用グラス
チメクが脚光を浴びたドラマ「星から来たあなた」
ちなみに「チメク」が大きく脚光を浴びたのは、2013年~2014年にかけて韓国で放映された大ヒットドラマ『星から来たあなた』。 このドラマのなかで、女優のチョン・ジヒョン扮するチョン・ソンイの好物がチメクだったことによります。
チョン・ソンイがドラマのなかで「雪の降るにはチメク(눈 오는 날에 치맥、ヌンオヌンナレチメク)」といったことがきっかけです。このドラマの人気により、チメクは韓国内だけではなく中国でも注目されるようになりました。
『星から来たあなた』(Amazon.co.jp) 2014年2月21日の東亜日報によると、ドラマの放映後、フライドチキン店に大行列ができた、という話も伝えられています。
ドラマ「星から来たあなた」で、主人公のチョン・ジヒョンがこれ(「雪が降った日には・・・」:当サイト補足文追加)を言った後、中国・上海では韓国式フライドチキンを買うために3時間並んで待つほどになった。東亜日報 (2014/2/21)社説より引用
中国では「星から来たあなた」の影響力はとても強く、実際に中国人観光客がドラマのロケ地である、仁川・松島の石山(ソクサン)を多くの人たちが訪れたほどです。
キム・スヒョン扮するト・ミンジュンが、チョン・ソンイ(チョン・ジヒョン)を救った場所として話題となり、チョン・ソンイがト・ミンジュンに渡したかんざしが下の写真。このかんざしに願いことを書いて、つるしておくのです。
※仁川在住の韓重澤氏から広報用に頂きました。ありがとうございます。 「星から来たあなた」の放映が終わった後は、「チメク」がより注目されるようになりました。
韓国で会社勤めするとチメク!留学生もチメク!
韓国で働いていて、仕事をした帰りに「きょうこのあと一杯どう?」と誘いがかかるとしたら、そのひとつに入るのが「チメク(チメッ)」だといえるでしょう。仕事終わりにフライドチキン店に寄って、チキンをつまみながら、おしゃべりします。
チメクは留学生の思い出の食べもの!
2014年4月16日付の中央日報によると、チメクは韓国を訪れる外国人留学生の思い出の食べ物にもなっている、といいます。私が留学していた当時(2012年頃)も街中にチキン店はかなり多く、その後も「チメク」という言葉とともに、フライドチキンが韓国の国民食のひとつとして定着しています。拙著:キムチ・チキン・即席めんが韓国で国民食になったワケ(海外ZINE・2020年)
外国人留学生の間で韓国と言えば思い出す食べ物に、「キムチ」でなく「チメク(チキンとビール)」が選ばれた。・・・(中略)・・・韓国の食べ物のうちで「最も印象深い食べ物」を尋ねる質問には、全回答者の32%が「チメク」を挙げた。中央日報(2014/4/16)記事より引用
外国人留学生が、韓国の思い出のひとつとして挙げる「チメク」。チキンは韓国の飲食店で食べると1羽の価格が約15,000ウォン。学生街ではテイクアウトで1羽8,000ウォンというところもあり、庶民的な価格です(2013〜2014年頃の価格)。
それだけに友だちと食事したり、飲みに行く場所はチキン店となるわけです。そして「チメク」という言葉の言いやすさも理由でしょう。「一言で言い表せる」というのが強いインパクトになっています。
ジャガイモとビールを合わせて「カムメク(감맥、じゃがいもとビールの組み合わせ)」、ピザとビールを合わせて「ピメク(피맥)」という言葉もありますが、それでもやはり「チメク」が最も一般的に使われているのです。大邱では2013年から毎年夏にチメクフェスティバルが開催されています。
チメクといえば、ビール。韓国のビールは飲みやすい!?
そんなチメクのダブル主役のひとつは、ビール。メクチュ(メッチュ)です。韓国のビールはわりと薄口。ビール好きにはちょっと物足りないけれど、日本でビールがちょっと苦手だという方や、女性には意外と人気です。
また韓国では生ビールをジョッキにつぐときに、泡を入れずにいっぱいまでビールを注ぐ傾向にあります。Maxは「日本のビールに近い」という評判もありますが、もしチャンスがあれば、いろいろ飲み比べたりしてみてください。
チメク、チキンの種類はどんなものがあるの!?
さて、そのチキンの種類は様々だと思いますが、とくに代表的なものがフライドチキンだといえます。
韓国ではコチュジャンベースのソースをかけた、ヤンニョムチキンという、甘辛の味付けチキンもあります。こちらのほうが韓国らしい味付けです!
ちなみにチメクの元祖は、フライドチキンではなく、「トンタク(鶏の丸焼き)」です。トンタク(鶏の丸焼き)VSフライドチキン トンタクは70年代に電気オーブンで焼いたチキンが流行したのですが、そのときにビールと、鶏肉を一緒に食べるようになったといいます。下の写真が、冒頭の写真と同じ、トンタク(鶏の丸焼き)です。
フライドチキン+ビールの「チメク(치맥)」が一巡した近年では「トンタク、トンタッ(통닭)」が再び脚光を浴びるようになっています。60~70年代に流行したという鶏の丸焼き「トンタク(통닭)」。それが半世紀近くの時を経て、再び人気を集めているのです。
ただし近年のトンタクはかつての「電気トンタク(전기통닭)」だけではなく、「鶏の丸揚げ」も含まれており、むしろそれが主流になっています。韓国語では「ティギムトンタク(튀김통닭)」といいます。 小さな丸鶏を一羽食べればそれなりに満足できますし、もう一匹食べれば通常なら充分でしょう。2人で3匹くらいでちょうど良いかもしれません。
チキン&ビールの絶妙なコンビ「チメク」は懐かしの「トンタク」にも
韓国でチメクを味わうには?
街のチキン店に行って買ってみよう!韓国旅行中にチメクを味わう方法としてのひとつは町のチキン店に出かけること。
これが一番スタンダードですが、近年旅行客がチメクをする場所なのが宿泊先のホテル。宿泊した先で電話で注文し、ひとりでチキンを食べるのだとか。電話だと伝えるのに苦労するかもしれません。
さらには漢江(ハンガン)公園でグループで集まってチキンを宅配注文したりする人もいます。とにかく、旅行で韓国を訪れたら、屋外でビールを飲みながらチキンを楽しむのもよいでしょう。
また フライドチキンといえば、街中にある韓国式のビアホール「HOFチプ(호프집)」でも食べられます。またはフライドチキンのチェーン店も多く、そうしたところにはオシャレな外観で若者が多い印象。テイクアウトして自宅で、観光客であればホテルで愉しむ人もいます。参考:韓国の居酒屋(海外ZINE、拙著)
日本でチメクを味わうには?
2020年のコロナ禍以降は韓国式チキンの店が増えてきて、それぞれの街に韓国チキン店ができたところもあると思います。お店でフライドチキンをテイクアウト購入して、自宅でビールとともに味わってみるのもよさそうです。
特に韓国のお店ではフライドチキンももちろんのことですが、ヤンニョムチキンを選んだり、ハーフ&ハーフで2種類を頂くのもよいのではないでしょうか。そのほかお店ごとに他の味も用意されているのでそれを選んでもよいでしょう。
少しでも韓国に近づけるならば、大根の酢漬け(チキンム:치킨무)も用意してみてはいかがでしょうか。お店でも購入できますし、自宅でも手軽に作れます。韓国ビールがあれば雰囲気は十分ですが、もちろん日本のビールでも美味しくいただけます。
または韓国チキンではありませんが、ケンタッキー・フライドチキンも「チメク」としていただくのもよいと思います。
ケンタッキー・フライドチキンは酒類の提供を行っていない店がほとんどですが、東京の高田馬場店、赤羽店ではお酒とともに味わえる店舗です。もちろんテイクアウトなら、気兼ねなくお酒とともに頂くことができるはずです。
※この記事は個人コラムとして最も早い2014年に「チメク」に焦点を当てた記事であり、その後修正を行いました。筆者が取材を行った2018年『散歩の達人』東京コリアンタウン特集でも「チメク」というワードが登場しています。